睡眠前に音楽を聴くとリラックスできるって本当?α波と睡眠の関係は?
インターネットの発展に伴ってさまざまな音楽視聴サービスが台頭し、α波の出現を促すリラクゼーション音楽も増えてきました。目を閉じて心身ともにリラックスしている状態では、α波という脳波が主体となります。そのため、就寝前にα波が出現しやすい状態を作ることは、寝つきの改善にもつながるでしょう。
今回は、α波と睡眠の関連性や、就寝前に取り入れたい音楽について解説します。睡眠の質を改善するために「音楽」を取り入れたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
音楽と睡眠は密接な関係がある
音楽を聴く習慣は、睡眠に影響を与えるといわれています。川のせせらぎや焚き火などの自然音やリラクゼーション音楽などを聴くことで、心が落ち着いた経験がある方は少なくないのではないでしょうか。
音楽が人に与える影響はさまざまです。
例えば、音楽がコルチゾール(ストレスホルモン)の濃度を下げ、ストレスや不安を軽減することが明らかになっています。音楽に耳を傾けることで、入眠を妨げるような不安や雑音から気を逸らすのにも役立つでしょう。
また一部の音楽は自律神経を落ち着かせて心拍数や脈拍を低下させ、呼吸を深くすることで、睡眠の改善を促します。※出典:音楽のストレス解消効果について 心理的指標および生理的ストレス指標による検討
音楽と睡眠の関係性や音楽の効果については、下記の記事にくわしくまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。
ぐっすり眠れる音楽ってあるの?睡眠の質を高める音楽の選び方睡眠のカギは脳波「α波」にあった
脳波とは、脳の活動によって引き起こされる電気的信号のことです。脳波には複数の種類があり、入眠時に関係があるのはα波です。8Hz以上13Hz未満の周波数をもつ脳波は、「α波」に分類されます。
α波とは、落ち着いているときやリラックスしているときに主体となる脳波です。目を閉じるとα波が現れやすくなり、目を開けるとα波が抑制されるという特徴があります。
そのため、就寝時にα波が主体となることで、寝つきがよくなる可能性があると言われています。その後、睡眠状態に入るとα波は徐々に減少し、深い眠りにつくと消失します。
そのため、α波を発生させやすい音楽を聞き、脳をリラックス状態へと促すことで、寝付きやすくなると考えられています。
Hz(ヘルツ)とは
1秒間に繰り返す波の数を「周波数」といい、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。
音は、周波数が小さいほど低く、大きいほど高い音になります。
自然界の音は広い帯域に存在しますが、人間には20~20,000Hzまでの振動しか「音」として感じ取ることができないと考えられています。
周波数の大きい高音を聞き取る力は歳を重ねるごとに衰えていき、高齢になると10,000Hz以上の音が聞き取りにくくなります。
また、脳波についても同じようにHzを用います。
睡眠時の脳波は移り変わっている?
覚醒度や睡眠深度にともない、主体となる脳波帯域が変化するというのが定説です。リラックスした状態で目を閉じていると、α波が主体となります。睡眠状態に入ると、α波はだんだん少なくなり、代わりにθ波が主体に、深い睡眠に入ると、δ波が目立つようになります。
さらに睡眠時には、他にもいくつかの特徴的な波形の脳波が出現します。
<睡眠段階と波形の特徴>睡眠段階 | 波形 |
---|---|
覚醒期(Stage W) | 脳波はα波をはじめとする周波数の波が混在しています。 |
入眠期・軽睡眠初期(Stage 1) | 眠りに入り始めると、α波が少なくなり、やがて消失します。 |
軽睡眠期(Stage 2) | 紡錘波(spindle)やK複合と呼ばれる特徴的な波形が出現します。 |
中等度睡眠期(Stage 3) | 眠りが深くなり、Stage 3に入ると、δ波が20~50%ほど出現します。 |
深睡眠期(Stage 4) | Stage 3よりもさらに眠りが深くなると、δ波が50%以上出現します。 |
レム睡眠期(Stage REM) | 体が深い眠りにつくと、脳波はθ波が主体となります。 |
α波以外の脳波の特徴については、以下で解説します。
β(ベータ)波とは
14Hz以上の脳波は、「β波」に分類されます。β波は、もっとも波長が短い脳波です。24Hz以上の脳波はγ(ガンマ)波として定義されることもありますが、脳波解析の対象にはなっていません。
β波は、思考を巡らせているときや集中しているときに現れる脳波と見なされています。緊張状態になるとα波が減少し、β波が増えていきます。
θ(シータ)波とは
4Hz以上8Hz未満の周波数をもつ脳波は「θ波」と呼ばれ、記憶形成を担う脳の部位「海馬」で観測される脳波として知られています。動物が学習や探索をしているときによく出現しますが、深い瞑想状態や浅い睡眠状態の時にも観測されます。
δ(デルタ)波とは
4Hz未満の周波数をもつ脳波は、「δ波」と呼ばれています。α波よりも周波数の低いθ波とδ波は「徐波(スローウェーブ)」と呼ばれており、睡眠時によく出現します。
覚醒状態ではほとんど見られず、睡眠サイクルの中でもっとも深い眠り(徐波睡眠、ノンレム睡眠)についているタイミングで観測される脳波です。
聞くとリラックスできる音楽の特徴とは?
リラックスしやすい音楽とそうでない音楽にはそれぞれ傾向があります。そうはいっても、睡眠に最適な音楽ジャンルというのは定まっていません。
以下の特徴を押さえた音楽が効果的と考えられています。
- 歌声が入っていない音楽
- 高周波音をだす音楽
- 自然の音
歌声が入っていない音楽
リラックスしやすい音楽を探している場合は、歌声が入っていない音楽を選びましょう。 理由として、歌詞を含む音楽の場合、脳が歌詞を理解しようとして、活発な状態になってしまうからです。歌詞が入っていない音楽の例は、クラシック音楽や、インストゥルメンタル、リラクゼーションを目的に作られた音楽が該当します。
高周波音を含む音楽
高周波音を含む音楽は、脳のα波を発生しやすいといわれています。 特に4,000Hz以上の音楽が効果的で、脳をリラックスさせ、深い眠りへと促進していきます。 周波数が4,000Hz以上のクラシック音楽の代表格がモーツァルトです。「ピアノと管弦楽のためのロンド」や「フルートと管弦楽のためのアンダンテ」が代表的です。自然の音
自然の音には「1/fゆらぎ」のリズムが含まれており、そのゆらぎがα波を引き出すといわれています。「1/fゆらぎ」とは、自然音だけでなく虫の発光現象、人の心拍の変化などにも発生します。
カテゴリーとしては音楽ではなく音ですが、自然の音を収録したBGM集を探してみるのも良いでしょう。
一方、リラックスしにくい音楽とは?
感情を揺さぶる音楽・激しい音楽などは感情が高ぶることがあり、刺激が強いと眠れなくなってしまう可能性があるため、避けたほうが無難です。 また先述しましたが、歌詞がある音楽も避けるのがベターです。脳が歌詞を理解しようと覚醒状態に入ってしまうためです。睡眠前に音楽を聞くときに注意したいこと
就寝前に音楽を聞く場合、以下のような注意点があります。
- イヤホン・ヘッドホンを長時間つけっぱなしにしない
- 寝入ったら音楽を流し続けない
- 「イヤーワーム」を覚えたら音楽を聴くことを中止する
これから紹介する注意を知らないと、心地良い睡眠を妨げてしまう可能性があります。以下をご確認いただき、音楽を使って質の高い睡眠を手に入れましょう。
イヤホン・ヘッドホンを長時間つけっぱなしにしない
イヤホン・ヘッドホンで長時間音楽と流すと、聴覚に悪影響が及ぶ可能性があります。就寝前にはヘッドホンやイヤホンを使わず、スピーカーから小さい音量で流すようにしましょう。世界保健機関(WHO)は、2015年に「12歳~35歳のうち11億人が、ヘッドホンやイヤホンによる難聴のリスクにさらされている」と報告しました。
就寝前に音楽を楽しむ場合にも、音量を上げすぎず、ヘッドホンやイヤホンを使いすぎないようにしましょう。寝入ったら音楽を流し続けない
寝入っているときにも音楽を流し続けるのは、おすすめできません。
就寝中の脳波はα波から始まり、δ波、θ波へと移行していくことで、深い睡眠へと落ちていきます。音楽は脳波をα波へと促す作用はあると考えられていますが、δ波、θ波へと促すものではありません。
入眠してからもα波をだす音楽を流す必要はなく、むしろ脳を覚醒状態にさせてしまうこともあり得るため、注意が必要です。音楽を聞いている途中で寝落ちしてしまわないように、予め音楽プレイヤーやスマートフォンなどのスリープタイマー機能を活用するのも良いでしょう。
「イヤーワーム」を覚えたら音楽を聴くことを中止する
イヤーワームとは、音楽の一部が頭から離れず、脳内で繰り返し音楽が流れ続けているように感じる現象のことです。この現象は睡眠前の音楽鑑賞を含めて、日常的に音楽を聞く方に起こりやすく、また「イヤーワームは睡眠の質に悪影響を与える」という研究結果が報告されています。
イヤーワームを感じたらすぐに音楽を切り、イヤーワームから意識をそらす行動をとるのがおすすめです。就寝前に音楽を聞く習慣を取り入れよう!
リラックス状態で目を閉じると、α波が出現し、眠りが深くなるにつれてα波は消失します。眠る前には、α波が出るようなリラックス状態を保つことで、眠りに入りやすくなるでしょう。
音楽と睡眠には深い関係があり、音楽の力を借りることで、睡眠の質を高められます。就寝前のリラックスタイムに音楽を聴く時間を設けることで、睡眠の質を高めるのにつながるでしょう。まずは、就寝前に音楽を聴く習慣を取り入れてはいかがでしょうか。
オンライン上には、睡眠のために音楽を楽しむサービスやアプリがたくさん存在します。多種多様なサービスを活用して、自分のライフスタイルや夜のルーティンに合ったプレイリストを探してみてください。
既存の睡眠用プレイリストではリラックスできないなと感じる場合は、自分が心地良いと感じる楽曲でプレイリストを作ってみるというのも1つの方法です。
また「Active Sleep LAB」では眠りにまつわる情報を配信しています。よろしければ、以下の記事もご覧になってください。
睡眠の質を上げる方法とは?快眠を得るコツを紹介 生体リズムを整えて、自分の眠りを、体調を改善する。Active Sleep LABとは
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