更新日:2026.07.16
「起きられない」は怠けじゃない?
思春期に潜む「睡眠・覚醒相後退障害」とは

毎年9月になると、「朝起きられなくなった」「学校へ行けなくなった」という子どもの相談が増えます。
保護者の中には、「夏休み中に夜更かしをしたからだろう」「生活がだらけたせいではないか」と考える方も少なくありません。もちろん生活習慣の影響はあります。しかし実際には、それだけでは説明できないケースもあるのです。
近年、睡眠医療の分野で注目されているのが「睡眠・覚醒相後退障害(すいみん・かくせいそうこうたいしょうがい)」です。これは単なる夜更かしではなく、体内時計そのものが後ろへずれてしまう睡眠障害です。思春期から20代に多くみられることが知られています。
夏休みは、この状態を悪化させやすい時期です。だからこそ、夏休み終盤に慌てないよう知っておいていただきたいことがあります。
「起きられない」は怠けではない
睡眠・覚醒相後退障害の子どもは、深夜になっても眠くなりません。午前3時、4時になってようやく眠気が訪れるのです。その結果、朝7時に起きることが極めて困難になります。
一方で、学校がない日に昼近くまで眠ることができれば、比較的元気に活動できます。つまり、「眠れない」のではなく、「眠る時間帯が後ろへずれている」状態です。
<睡眠・覚醒相後退障害の主な特徴>
■望ましい時間(例:夜11時)に布団に入っても、全く眠れない。
■明け方(例:午前3時〜5時)になってようやく深い眠りにつく。
■一度眠ると睡眠の「質」自体は悪くないため、昼前や午後まで起きられない。
■無理に早朝に起こされると、激しい頭痛、吐き気、強い倦怠感などが現れる。
この障害は思春期から青年期にかけて発症しやすいことが知られています。思春期は体内時計の周期がもともと後ろにズレやすい(夜型化しやすい)という生物学的な特徴があり、そこに夏休みの「夜更かし・朝寝坊」という環境要因が加わることで、一気に発症の引き金が引かれてしまうのです。
なぜ夏休みは「体内時計」が狂いやすいのか
夏休みには体内時計を遅らせる要因がそろっています。
■朝、決まった時間に起きる必要がない
■夜遅くまで動画やSNSを見る
■ゲーム時間が長くなる
■日中に外へ出ず、日光を浴びる機会が減る
■冷房の効いた室内にこもり、活動量が減る
こうした生活が続くと、体内時計は毎日少しずつ、自覚がないまま後退して夜型になっていきます。
夏休み中は問題なく見えても、新学期が始まると突然表面化します。
8時登校のために6時半に起きなければならないのに、体内時計は「まだ夜中」と認識しているのです。これは「激しい時差ぼけ」に近い状態といえます。
保護者の皆様へ:もし朝起きられなくなったら
もしお子さんが朝起きられない状態になったときは、どうか「怠けている」「気持ちが弱い」と責めたり、決めつけたりしないでください。まずは冷静に、お子さんの現状を以下の視点で観察・確認してみましょう。
■夜、実際に眠れているのは何時頃か?
■何時まで寝ているか?
■日中、少しでも日光を浴びる機会があるか?
■就寝前に、スマホやゲームなどの強い光を近くで見続けていないか?
睡眠・覚醒相後退障害の治療やリズムの調整には専門的知識が必要なため、長引く場合は睡眠の専門医に相談しましょう。日本睡眠学会のホームページには専門医と専門医療施設が掲載されており、身近な病院を探す手がかりになります。「怠け」ではなく「体からのサイン」として捉えることが、解決への第一歩です。
三橋美穂(快眠セラピスト・睡眠環境プランナー)
寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。著書に『オトナ女子の不調と疲れに効く 眠りにいいこと100』(かんき出版)ほか多数。https://sleepeace.com/


















