健康寿命とは?平均寿命との違いといつまでも元気に過ごす方法
健康寿命は、eヘルスネット「平均寿命と健康寿命」によると「健康上の問題により生活が制限されることなく生活できる期間」を指します。ここでは健康寿命の定義や平均寿命との違い、全国の健康寿命データをご紹介します。あわせて、健康寿命を延ばすために実践したい生活習慣のポイントもまとめました。
健康寿命とは?平均寿命との違い
健康上の理由で生活を制限されることなく、自立して健康に生活できる期間が「健康寿命」です。世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した指標で、平均寿命とは定義が異なります。
平均寿命は、健康な期間だけでなく健康上の問題により生活が制限される期間も内包した0歳における平均余命のことです。
平均寿命が長くても、不健康な状態が長ければ、その分介護費用や医療費がかかってしまいます。いつまでも元気に過ごすためには、健康寿命を延ばすことが重要です。
平均寿命と健康寿命の推移
日本は、平均寿命・健康寿命ともに世界でもトップレベルの高さを誇ります。厚生労働省の資料「健康寿命の令和元年値について」によると、令和元年時点の健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳と報告されています。一方の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳という結果でした。このことから、健康寿命と平均寿命の差が、それぞれ8~12年あることがわかります。
以下の図表は、健康寿命と平均寿命の推移を表したものです。平成22年・平成25年・平成28年・令和元年のデータを元に作成しています。
平均寿命と健康寿命の推移:男性
- 平成22年
- 平成25年
- 平成28年
- 令和元年
平均寿命と健康寿命の推移:女性
- 平成22年
- 平成25年
- 平成28年
- 令和元年
参考:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」より作成
図表からわかるとおり、健康寿命・平均寿命は男女ともに延びています。くわえて、健康寿命と平均寿命の差が年々減少している点にも注目です。国は、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」、及び「健康寿命を男女ともに3歳以上延伸し75歳以上とする」という目標を掲げています。
老化でみられる変化
老化は遅かれ早かれ誰にでも訪れますが、その早さや程度には個人差があります。以下では、老化でみられる具体的な変化をご紹介します。
- 身体の変化
- 記憶力と人格・精神面の変化
身体の変化
老化によって、身体には多くの変化が起こります。中でもわかりやすい変化が、体力や筋力の衰えではないでしょうか。年齢とともに重い物を持つのがつらくなったり、疲れが取れにくくなったりします。また、「耳が遠くなる」「咀嚼力や嚥下力が低下して食べるものが制限される」「視力が落ち、老眼や白内障になる」といった変化も現れます。
これは、加齢に伴って身体の各器官に存在している細胞が減少したり、細胞のはたらきが鈍化したりすることが原因です。白髪が増える、シワやシミ、たるみが出て肌にハリがなくなる、腰が曲がるなど外見の変化だけでなく、身体機能にも様々な変化が及びます。
外見にみられる変化 | ・白髪が増える ・シワ・シミ・たるみが出る ・腰が曲がる ・身長の低下や体重の減少がみられる ・薄毛/脱毛 |
体力・筋力にみられる変化 | ・筋肉量の減少 ・骨密度の低下 ・ADL能力(※歩行・トイレ・入浴・食事など日常生活に必要な動作能力)の低下 |
各器官系にみられる変化 | ・聴力の低下 ・咀嚼力の低下 ・嚥下力の低下 ・視力の低下 |
記憶力と人格・精神面の変化
高齢期が訪れると、精神面や知能面にも影響が及びます。特にわかりやすい例が、記憶力の低下です。これには、脳の萎縮が関わっています。高齢になると脳が少しずつ萎縮していきますが、なかでも強い萎縮が起こるのが大脳です。大脳には記憶力や言語を司る「側頭葉」が含まれており、側頭葉の萎縮が進むことで記憶力の低下が起こると考えられています。その結果、新しいことを覚えるのが苦手になったり、過去の出来事を思い出すのに時間がかかったりといった変化がみられるのです。
また、年齢とともに人の人格や性格が目立つ傾向にあります。頑固になったり、保守的になったりして、周りの人々に理解されずに孤独感を高めてしまうケースがみられます。とはいえ、こうした変化は誰にでもみられるものではありません。若い頃よりも思慮深くなったり、明るく意欲的になったりするケースもみられます。
記憶力の変化 | ・新しいことを覚えるのに時間がかかる ・過去の出来事を思い出すのに時間がかかる |
人格・精神面の変化 | ・頑固になる ・保守的になる ・猜疑心が強くなる ※精神的にゆとりが出たり、意欲的な性格になったりする方もいる |
健康寿命を延ばし、いつまでも健康で元気に過ごすためにはこうした心身の老化を遅らせる必要があります。
内臓の老化度を知る方法
内臓の老化は、全身の老化につながります。健康寿命を延ばすためには、自身の内臓年齢(体内年齢)を把握したうえで生活習慣を改善することが重要です。
- 血液検査から内臓の老化度を把握する
- 内臓年齢を若く保つ方法
血液検査から内臓の老化度を把握する
内臓年齢と密接に関係しているのが血管です。血管は動脈・静脈・毛細血管に分類できる器官で、全身に血液を届ける役割を担っています。全身にまんべんなく血液が行き渡ることで、各臓器に必要な酸素や栄養が届きます。同時に、血液には全身の老廃物を回収し腎臓まで運搬する役割もあります。血液の通り道である血管を若々しく保つことで、内臓年齢の維持にもつながるのです。
内臓年齢を若く保つ方法
若々しい内臓を保つためには、身体の酸化と糖化に気をつけることが大切です。身体の酸化は、体内へ取り組まれた酸素が「活性酸素」へ変化して起こります。そもそも活性酸素は、その高い酸化能力で体内の細菌やウイルスを攻撃する、いわば免疫です。睡眠不足や過労などによってストレスが蓄積されると身体がSOSを発することで活性酸素が過剰生産され、内臓の老化が進んでしまいます。
糖化とは、食事で摂取した余分な糖と身体を構成するタンパク質が結合することで起こります。体内で結合した糖とタンパク質はそのまま体温によって温められ、劣化していきます。臓器を作るタンパク質が糖と結合して劣化すると、内臓の老化につながるのです。
身体の酸化・糖化を防ぐためには、脂肪と糖分を摂りすぎないことが大切です。特に肉類やバターなどの動物性脂肪は控えめにして、代わりに糖質の代謝をサポートするビタミンB群を積極的に摂りましょう。また、抗酸化作用が期待できるビタミンA・C・Eを摂るのも良いでしょう。具体的には、大豆製品や緑黄色野菜などの食材が挙げられます。
くわえて、食後にウォーキングするのも良いでしょう。ウォーキングは糖をエネルギーとして消費する「有酸素運動」の一種であるため、特に糖化を防ぐ効果が期待できます。
健康寿命と生活習慣病
現在、日本人の死因の約6割は「生活習慣病」だとされています。健康寿命延伸の鍵は、生活習慣病の予防にあるといえるでしょう。生活習慣病とは、がんをはじめ糖尿病や心疾患などの疾患を指します。これらは食生活の乱れや運動・睡眠不足、嗜好品のとりすぎなどが要因とされています。生活習慣病を予防するには、食生活や運動の習慣を見直すことにくわえ、睡眠の質を上げることも急務です。
睡眠の質と生活習慣の関係
睡眠の質は、生活習慣病発症のメカニズムに大きく関わっています。たとえば慢性的な不眠が続くと、睡眠時間の短縮によってうつ状態が続き活動量が低下、間接的ではありますが様々な生活習慣病のリスクを抱えてしまうのです。
また、就寝時に呼吸が頻繁に停止する「睡眠時無呼吸症候群」を発症している方も要注意です。酸化ストレスを引き起こしたり、低酸素状態による心疾患リスクが高まったりします。その他、高血圧や脂質異常症などとの関わりも指摘されています。
参考:厚生労働省「睡眠と生活習慣病との深い関係」
生活習慣病を早期に発見し治療するためには、自分の健康状態を定期的にチェックすることが大切です。睡眠は、生活習慣病のメカニズムに大きく関わっています。日々睡眠の状態を記録することで、体調の異変を早めに知ることができます。パラマウントベッドが開発した「Active Sleep ANALYZER」は、ベッドに設置することで、あなたの睡眠をモニタリングできます。専用のスマートフォンアプリで睡眠を分析したデータを確認でき、睡眠アドバイスも受けることができます。あなたも「Active Sleep ANALYZER」でご自身の睡眠管理を始めてみませんか?
健康寿命を延ばす方法
健康寿命を延ばす方法は、国立高度専門医療研究センター機関によって具体的にまとめられています。同機関によって公開されている「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」をもとにした、健康寿命の延伸方法をご紹介します。
- 喫煙・受動喫煙を避ける
- 節度ある飲酒を心がける
- バランスの良い食事をとる
- 適正体重を維持する
- 運動を習慣化する
- 心の健康を保つ
- 感染症対策をする
- 健康診断・がん検診と口腔ケアをする
喫煙・受動喫煙を避ける
たばこには、発がん性物質や酸素不足を引き起こす可能性のある一酸化炭素などの有害物質が含まれています。また、血管が収縮することで高血圧状態になるのもたばこの特徴の1つ。喫煙者の方は禁煙すること、非喫煙者の方は受動喫煙を回避することが大切です。
節度ある飲酒を心がける
過剰飲酒は、高血圧や2型糖尿病の発症リスクを高めます。禁酒、または節酒を心がけましょう。1日の飲酒量をあらかじめ決めたり、休肝日を設けたりすると効果的です。特に、1日に180~360ミリリットル以上飲酒する習慣のある方は、週に2日の連続した休肝日を設ける必要があります。また、飲酒しない方に対して無理に飲酒を強要するのも避けましょう。
バランスの良い食事をとる
「主食・汁物・主菜・副菜2品の献立を意識する」「1日350グラムの野菜を摂る」「塩分の過剰摂取は避ける」などの点を意識した食事を摂りましょう。くわえて早食いは避け、よく噛んで食べることも重要です。人が満足してもなお食べ続けてしまうのは、身体が満腹と感じるまでには20分以上かかるとされているからです。早食いをすると満腹感を感じる前に必要以上の量を食べてしまうため、その結果食べすぎてしまい、肥満につながりやすくなります。
適正体重を維持する
年齢に応じた適正体重を維持しましょう。太りすぎは、2型糖尿病や循環器病の発症リスクを高めてしまいます。また太りすぎだけでなく、痩せすぎにも注意が必要です。骨がもろくなる「骨粗鬆症」のリスクの増加や、倦怠感や焦燥感など精神面への悪影響もあると考えられています。
運動を習慣化する
ハードな運動ではなく、負担の少ないウォーキングや階段を利用した昇降運動などといった有酸素運動を無理のない範囲で取り入れると良いでしょう。具体的な身体活動の目安は、歩行または歩行と同等以上の強度の身体活動を1日60分行うこと。くわえて、その中で息がはずみ汗をかく程度の運動が週に60分程度含まれると、なお良いとされています。高齢者の場合は、強度を問わず身体活動を毎日40分行うことが推奨されています。
心の健康を保つ
心理的ストレスを避ける・解消することも重要です。「一人で抱え込まず誰かに相談する」といった社会的な関係性を持つことで、心理的ストレスの軽減につながります。家族や友人、知人に話すのが難しいときは、病院や行政を頼るのも手です。また、心理的ストレスの軽減には質の良い睡眠をとることも大切。逆にいえば、眠れない日が続くときは心理的ストレスがかかっているとも考えられます。
感染症対策をする
インフルエンザや肺炎球菌の予防のため、健康に問題がない場合はワクチン接種も検討しましょう。また、肝臓病予防のためにも肝炎ウイルスの感染検査を受け、万が一感染していた場合は速やかに治療を受けてください。胃がんや胃潰瘍などのリスクを軽減するためにも、ピロリ菌の感染検査も忘れずに受けましょう。
健康診断・がん検診と口腔ケアをする
生活習慣病やがんの早期発見のためにも、定期的な健康診断やがん検診を受けることが大切。くわえて、口腔ケアを行うことも重要です。歯磨きやうがいなどを通して口腔内を清潔に保つことで、歯周病の予防や誤嚥性肺炎の予防につながります。誤嚥性肺炎は、食べ物を誤嚥してしまった際に口内の細菌が肺へ入り込んでしまうことで発症しやすくなるためです。
いつまでも元気でいるために健康寿命を延ばそう
日本は、世界的にも有数の長寿国です。いつまでも元気に過ごすためには、平均寿命だけではなく健康寿命を延ばすことが不可欠。平均寿命と健康寿命の差を、いかに縮小するかが重要です。食事や運動、睡眠など様々な面で生活習慣の改善に取り組むことで、健康寿命の延伸につながります。本記事でご紹介した方法も参考に、ぜひ自身の生活習慣を振り返ってみてください。
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