ぐっすり眠れる音楽ってあるの?睡眠の質を高める音楽の選び方
音楽は睡眠を改善する手軽な方法で、寝つきを良くしたり、リラックスする状態を作ったりできます。しかし、どのような音楽が睡眠を助けるのか、もしくは睡眠を邪魔してしまうのかについて、詳しく知りたいという方もいるのではないでしょうか。ここでは、睡眠と音楽の関係、睡眠音楽の効果、眠るときに聴く音楽の選び方についてご紹介しますので、睡眠改善にご興味のある方 はぜひご参考にしてみてください。
音楽が睡眠にもたらす効果 とは?
音楽は心や体がくつろぐのを助け、睡眠をサポートする効果があります。
赤ちゃんに子守唄を聞かせて眠らせる方法は広く活用されていますが、睡眠音楽の効果に年齢は関係ないかもしれません。アメリカで行われた睡眠の悩みを抱えた60~83歳を対象にした実験では、音楽が睡眠の質を良くすることがわかりました(※1)。また、この実験中では、睡眠状態の改善がみられました 。毎晩のルーティンに音楽を取り入れれば 、より良い睡眠が得られる可能性があります。
音楽には、外から聞こえてくる雑音を遮る働きがあります。音楽が心身をリラックスさせることは知られていますが、音楽を聴くことで、楽しい気持ちを促したり、ストレスからの不調を一時的に逸らしたりする効果もアメリカの研究者による論文で紹介されています。このことから、音楽は睡眠の質を改善するのに役立っているのではないかと考えられています(※2) 。もし、音楽を聴くと気が散る場合は、雨や波の音を再現したホワイトノイズを聴いても良い かもしれません。
近年はインターネットが発達し、どこでもすぐに音楽を聴けるようになりました。眠りに関する悩みを持っている方は、試しに音楽やホワイトノイズを聴くことを夜のルーティンに組み込んでみてはいかがでしょう。
音楽が睡眠に与える影響
音楽が肉体的・精神的に与える効果を以下で2つ挙げます。いずれも、睡眠と密接にかかわっています。
ストレスや雑音から気を逸らす
睡眠トラブルがある方の多くは「ベッドに横になっても眠れない」と感じており、寝室と不眠を関連づけてしまっている方も少なくありません。適度なストレスは注意力を高めますが、寝つきを悪くするため、不眠につながる可能性があります。音楽はこういった不快感や心配事から気を逸らして、肉体的・精神的なリラックスを促し、眠りにつくサポートをしてくれます。たとえば、音楽を聴くと、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの濃度が下がることがわかっています。音楽に耳を傾けてストレスや雑音から気を逸らすことで、就寝前に不安やストレスを感じにくくなるのです。
自律神経系を落ち着かせる
自律神経系は、心臓、肺、消化器系の動きを制御するためのシステムです。音は耳から入り、電気信号に変換されて脳へと伝わり、自律神経系に作用して心拍や血圧に影響を与えることがわかっています。音楽のジャンルにもよりますが、ゆったりとしたテンポの曲を聞くことで、生体リズムが音楽と同調するのではないかという見方もあります。
アメリカの研究結果では、音楽を聴くことで呼吸がゆっくりと深くなり、心拍数や血圧が下がったほか、睡眠にも 改善が見られたとの報告があります。
睡眠に向いている音楽
結論からいうと、睡眠に最適な音楽ジャンルは一概にこれといえません。どのような音楽が睡眠にもっとも効果があるのかという点で、明確な結論が出ていないからです。自分の好きな音楽を聴くとテンションが上がり、心地良い音楽を聴くと癒されるように、本人が好ましい音楽だと思わなければ効果が出にくい、という理由もあるかもしれません。心地良く眠るために、睡眠のために作られたプレイリストを探しても良いですし、自分好みの曲を集めたプレイリストを作成しても良いでしょう。
ただ、最初にプレイリストを作るときには、「テンポ」に注目してみてください。好きな曲で睡眠用プレイリストを作るときには、ゆったりしたテンポの曲かどうかを意識することが大切です。音楽と睡眠の関連性を調べた研究では、人間が安静にしているときの心拍数は60~100程度で、音楽に合わせて心拍数が低下することで、心が落ち着くのではないかとも考えられています。クラシックやピアノの曲など、ゆったりとしたリズムの曲が多いジャンルに焦点を当ててプレイリストを作るのが無難かもしれません。
ただ、音楽が睡眠に影響を与えるのは、あくまでも自分の好みの問題です。 テンポが遅いからリラックスできるとは限りませんし、テンポが速い曲調がリラックスに向いていないとも限りません。感情を刺激する曲を聞くと、興奮して目が覚めてしまうので避けたほうが良いといえますが、程よくアップテンポで明るい曲のほうがリラックスできる、という方もいるでしょう。
現在ではオンラインで音楽が聴けるサービスが利用できます。自力でプレイリストを作るのは難しいという方も、すでに作られた睡眠用プレイリストを色々聴いてみましょう。ジャンルにとらわれず、自分が心地良いと感じる曲を探してみてください。
ホワイトノイズの効果
睡眠のための音楽として思いつくのは、ホワイトノイズといった音ではないでしょうか。ホワイトノイズとは、自然界でよく聴かれる雨や風、川のせせらぎの音などを再現した音を指します。睡眠を妨げるような雑音を遮り、リラックスや睡眠を促す目的で広く使われている音です。こういった自然界の音が眠りの質に与える影響について調べた研究はいくつかあり、様々な結果が出ています。
結論としては、ホワイトノイズ が睡眠改善につながるという結果について、疑問を呈する研究者も多いのが現状です。ホワイトノイズは睡眠の質を改善するという名目で使われているものの、エビデンスの質が低い研究も多く、睡眠に対する有効性が十分に確立されているとはいえません。今のところ、睡眠の質をサポートする可能性はあるものの、不眠に悩んでいる方に推奨するほどの有用性はないと結論づけられています(※3) 。
ホワイトノイズ が睡眠に与える影響については、「睡眠を改善する」と「睡眠を妨げる」という、両極端な研究結果が出ています。また、寝ている間に長時間イヤホンやヘッドホンを使ったり、大音量で聞いたりすることで、睡眠や聴覚に悪影響を及ぼす可能性も示されています。
一方で、ノイズを聞くことそのものについて、大きな副作用は確認されていません。もしホワイトノイズの音が気に入ったのであれば、睡眠習慣に取り入れても問題はありません。ノイズと相性がよくて、眠れるという方もいるでしょう。しかし、「ノイズは自分に合わないな」と思ったり、聴覚に異変を感じたりした場合は、すぐに視聴を止めましょう。
音楽を楽しむツールはたくさん!
睡眠のために音楽を楽しむサービスやアプリがたくさんあります。無料で気軽なサービスもあれば、有料で質の良いサービスを提供しているアプリもあります。
まずは無料で試してみたいという方は、動画サイト や音楽アプリを活用しましょう。動画サイトには、睡眠導入用に作られた音楽がいくつも配信されています。音楽だけではなく、朗読など も多く上がっているので、リラックスしながら耳を傾けられるコンテンツには困りません。また、睡眠前に自動再生を停止させておくと、動画が終わった段階で動画がストップするため、タイマーをセットする必要がないというのも便利です。音楽アプリは音楽作品を中心に集めていますが、目的に応じたプレイリストが充実しています。これらのサービスを使えば、お気に入りの傾向を見つけられるでしょう。
寝る前にスマホ画面を長時間見た場合、睡眠の妨げになってしまう可能性がありますので、動画サイトで音楽を聴くときは音を聴くだけにすると良いでしょう。
また、スマートスピーカーを使って、目的や希望を伝えれば、リラクゼーション音楽やホワイトノイズ を流してくれます。スマートスピーカーであれば「30分後に音楽を止めて」と伝えることで、自動的に30分後に音楽を止めることも可能です。デバイスを確認する必要がないので、電光にさらされることなく音楽を楽しめるというメリットがあります。
夜のルーティンのお供に、睡眠導入アプリを使ってみるのもおすすめです。無料版もありますが、有料版を購入することで視聴できる音楽を増やせます。アプリが気に入って、音楽に物足りなくなったら有料版を購入してみるのも手です。睡眠導入アプリでは、睡眠のために音楽を流せるほか、自分の不調に合わせたリラクゼーション音楽を流してくれます。睡眠の改善 だけではなく、イライラしている気持ちを静めたり 、瞑想用の音楽を流したりと、用途に合わせた音楽を聴くことができます。
このように、オンラインを使えば多種多様な音楽サービスを利用できます。自分のライフスタイルや夜のルーティンに合ったサービスを探してみましょう。就寝前のリラックスタイムに音楽を聴く時間を設けることが、睡眠の質を向上させる第一歩となるでしょう。
睡眠のために音楽を取り入れるときのポイント
夜のルーティンに音楽を取り入れたいと考えている方に向けて、就寝前に音楽を聴く際のポイントについて解説します。
就寝前に音楽を聴く習慣をつける
寝る前にゆっくりと体を休める時間を確保することで、寝つきがよくなります。夜のリラックスを促すルーティンは不安感やストレスを和らげ、リラックスを促す ので、音楽を聴くことをルーティンの一環として取り入れても良いでしょう。眠りながら聴くよりも、眠る前のリラックスタイムに音楽を取り入れることで、就寝前の不安感やストレスを解消でき、寝つきが良くなります。
ヘッドホンやイヤホンを使いすぎない
外からの音をシャットアウトしたい、音楽に浸りたいと思って、イヤホンやヘッドホンを使う場合には注意が必要です。
睡眠中に長時間・大音量でイヤホンやヘッドホンを使うと、聴覚にダメージを負いかねません。はじめは自覚症状がなくても、長時間大きな音にさらされることで少しずつ耳が聞こえづらくなり、難聴になってしまう可能性があります。また、イヤホンを長時間つけていると 耳垢がたまりやすく、耳が炎症や感染症を起こすリスクも高まるといわれています。
眠りながら音楽を聴く場合は、ベッドの脇にスピーカーを置く、枕の下にスマートフォンを置くといった方法で耳から音源を遠ざけて、できるだけ音量を絞って聴くほうが良いでしょう。耳をいたわるためにも、睡眠中に聞き続けるのではなく、自動的にタイマーで切れるように設定しておくことをおすすめします。
ジャンルにとらわれず自分に合った曲を探す
既存の睡眠用プレイリストでは入眠がうまくいかない場合は、自分が楽しいと思うプレイリストを作ってみましょう。ジャンルや曲調にとらわれず、自由に選んでみてください。ほとんどの方はゆったりとしたテンポの曲にリラックス効果を感じますが、明るく弾むような音楽でリラックスできるという方もいます。また、ホワイトノイズは、世間でいわれているほど睡眠の質を高めてくれる効果はないとされていますが、寝つきが良くなると感じる方もいます。
ただし、感情を揺さぶるような音楽は、興奮して目が冴えてしまうかもしれません。思い出深い懐かしい音楽や感情を刺激する歌詞が含まれているような音楽は避けたほうが無難です。
「リラクゼーション音楽だから聞く」「ホワイトノイズだから聞く」と決めつけず、好きな音楽を自由に試して、ほかでもない自分自身がリラックスできるプレイリストを作ってみましょう。
参考文献
(※1) National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National institute of Health “Music improves sleep quality in older adults. ”
(※2) National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National institute of Health “How does music aid sleep? literature review.
(※3) National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National institute of Health “Noise as a sleep aid: A systematic review.
Active Sleep LABとは
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